蒲郡シーカヤック事故について 

2016年12月12日蒲郡シーカヤック事故について
新聞報道から
12月11日午後、愛知県蒲郡市の離島・三河大島にシーカヤックで渡っていた男性2人が行方不明になり、三河湾を巡視艇と航空機で捜索したところ12日早朝、豊橋市明海町の海上でシーカヤック1艇と男性2人の遺体が見つかりました。死亡したのは豊川市に住む54歳と66歳の男性とみられており、カヤックが転覆した可能性が高いという。
2人は11日、午前11時頃、蒲郡市内のヨットハーバー横の砂浜から出発し、午後に三河大島で昼食をとったと家族に連絡しており、その後、カヤックが転覆して豊橋市の明海町の北の海岸近くまで流されたと思われます。三河海上保安署が2人の身元確認を急ぐと共に、当時の状況や転覆原因などを調べています。
男性2人がシーカヤックで三河大島へ(海陽ヨットハーバーから3.5km)
遺体で見つかった2人は豊川市在住の54歳と66歳の男性とみられています。この2人は12月11日午前、蒲郡市内のヨットハーバーからそれぞれが所有するシーカヤック2艇に乗って蒲郡市の離島「三河大島」へ向かい、午後1時頃には家族に「三河大島で昼食をとった」と連絡があり、その後に転覆した可能性が高いとみられている。

夜になり帰宅しないことを心配した家族から「三河大島にシーカヤック2艇で渡った2人が帰宅しない」という118番通報を受け、海上保安庁の巡視艇と航空機で三河湾を捜索したところ、豊橋市明海町の海岸から約30メートルの海上で、転覆した1人乗りのシーカヤック1艇が漂流しているのが見つかり、男性2人の遺体が相次いで見つかったものです。
見つかったシーカヤックはいずれも全長5メートルで、死亡した2人は三河大島に向かっていた2人とみられており、身元の確認を急いでいます。

      12月の蒲郡の天気で赤い所が事故の起きた日の気象です。




考察
海陽ヨットハーバーに自動車を駐車して砂浜から11時頃に出艇した。(もしもヨットハーバーに出艇届けを出していれば帰着予定時間になっても帰れない場合はハーバーのボートで救助に向かうか海上保安庁に連絡するので救助が深夜ではなくもっと早く始まったと思います。連絡があって海上保安庁が救助活動を始めたのは深夜です。)
海陽ヨットハーバーから三河大島までは3.5km風は向かい風か少し斜め、前からの風で3m位だと推定出来ます。陸から吹く風で同じような風速の時に見た所、波はさほど大きくは無かったと推定します。午後からは最大瞬間風速が35mにもなっています。
ウインドサーフィンの人の目撃情報あって16時30分頃に海陽ヨットハーバー近くで2艇が繋がっていて漕いでないので、大丈夫かと聞いたら親指を立てて返事をしたから大丈夫だと判断した事実からこの時点ではさほど緊迫しない何かがあったと思われます。2艇がつながっていると言う事は進むのを止めて流されているのと、カヤックはひっくり返ってはいないのでカヤック本体以外の何かがあったと推定できます。何があったかは解りませんがどちらか一人が身体の不調等で漕ぐ事ができなくなったかもしれません。一人がパドルを流してしまった事も可能性として有ります。とにかく漕げなくなってしまい、2艇平行に横に繋がって流されていたその後が解りません。その後二人ともひっくり返って翌朝、豊橋市明海町、北側の岸壁近くで発見されるまでの間が不明な部分です。なぜ二人ともひっくり返らなければならなかったのか。ウィンドサーフィンが出来るような海象です。漕げれば陸はすぐ近くです。
死亡原因は溺死と思われます。ライフジャケット、ウェットスーツを着用してました。発表では12日が波高が1.5m、水温は10〜15度だと思います。10度以下ならドライスーツを着用する基準です。
解らない事ばかりです。
しかし、今回の事故で亡くなられた方達の為にもこの機会を無駄には絶対にしたくありません。


結論(これからも考え続けます。)
原因は解りませんが緊急時に陸上と連絡手段を持つ事が絶対に必要だと思います。カヤックではプレジャーボート(小型船舶)違い、携帯電話、スマホ、トランシーバーは片手、両手をパドルから放さなければならないのと防水バックに入っているために風や色んな音があって緊急時(海象が荒れている時)会話がスムーズには出来るとは思いません。PLBならアンテナを伸ばしてスイッチを入れるだけで救助に必要な情報(406MHz)衛星経由でが海上保安庁に届きます。近づけば海上保安庁の船からはビーコンの電波(121MHz)で救助する人の方向は解ります。(海上保安庁の船には121MHzのビーコンの受信機があります)PLBにはストロボライトが付いていて夜間でも発見しやすくなっています。(PLBの取扱説明書PDF
同じようなシステムが船舶の遭難時に無線信号(遭難信号)を発信する装置や船舶の無線機、国際VHFにもDSC機能(ID、位置等を自動的に発信する)があります。

どの時点でどう言う判断をしたら良いか?
シーカヤックは沈(ひっくり返る)してロール(パドルを使って自力で起き上がる)ができなくて、脱艇した(カヤックから抜け出た)時点で日没までに海岸方向へ流される方向の風、流れがない時はPLBのスイッチを入れる判断をするべきです。ロールで起き上がれれば良いのですが身体とカヤックの間に隙間があったり、風、波の向きによってもロールが出来ない時があるかと思います。年齢、カヤックの形状、重さに寄ってもロールが出来ない場合もあります。カヤックになれる意味で練習はすべきだと思いますがロールで起き上がる事を安全に帰る為の前提にすることは無理があります。
沈してパドルフロートを使い最乗艇する事は静水に近い状態では出来るがある程度以上の海象では例え乗り込んでもすぐに波でコックピットを越え越えて海水は入ってくると思います。そこで何度も繰り返して体力を消耗する(ロールも)よりも体力を残した状態でカヤックに捕まって救助を待つ方が生存率が高いでしょう。最乗艇、ロールの練習はカヤック、海に慣れる為に必要だと思いますが荒れた気象海象では不確実だと思います。最乗艇して中に入った海水をビルジポンプで出す事ができれば良いのですがコックピットを越えてくる波の海水よりも出す海水が少なくなりそうな状態では無理です。最乗艇が出来てスプレースカートをして中に海水が残った状態で漕いで行ければ良いと思いますがカヤックの中の海水の量によっては再び沈の可能性もあります。
沈、脱艇して日没までに陸方向へ流されてもたどり着けそうもないなら迷わずPLBを使いましょう。(体力を残して!)海上保安庁に緊急連絡する事については、日本人的な「人に迷惑をかけたくない」と言う意識は海では捨ててください。もしあなたが亡くなった時はもっとはるかに大きな迷惑になります。アメリカではコーストガード(沿岸警備隊)に助けられて救助が遅いし、その後のサービスがダメだとクレームを付けた人もいます。

出来ればヨットハーバーから出艇して出艇届けを出しましょう。帰着予定時間を書いてその時間を越えないで帰るように!(時々、帰着申告を忘れる人がいます。)

フィッシングカヤック、1,2馬力のエンジンが付いたインフレータブル(ゴムボート)も同じです。

グループなら最低限、誰か一人がPLBを持っていれば良いと思います。PLBは税込み価格49680円と高いので一人なら持っている人から借りてでもPLBを持って行くべきだと思います。(PLBを借りて電波を出せば電波法違反です、命をなくすよりも法律違反を選びましょう。スイッチを入れなければ無線局の運用ではないので合法だと思います。厳密には使用を前提とする設置?は違法です。船舶の無線は緊急時には誰が使っても良いことにはなっています。)

海上保安庁の方々も広範囲で行方不明者を捜すより、位置の解っている生存者を救助する方がはるかに色んな面で良いと思います。

昔は誰も着けてなかった自動車のシートベルトや小型船舶のPFDの様に10年後にはすべてのシーカヤックに乗る人はPLBを付けているでしょう。
犠牲者がどれくらい出ればそれに気がつくのでしょう。

事故は忘れた頃にまた起こります。絶対に忘れないように!(PLBを持っていたら、持ってればと言わなくても良いように。)

ライフジャケットも小型船舶用ライフラフトの形に進化してほしいと思います。そうなれば波があっても確実に呼吸が出来るようになると思います。今のままでは波を被り続けると呼吸が出来ない時があります。

当店にPLBの実物、パンフレット、申請書等、展示があり、使い方、詳細は説明します。
ウッドノートはバイアス(業者、メーカー等)のかかっていない正確な商品情報、適切な使い方のソフトウエアの提供、ベストな気象海象の判断の方法を伝える事をこれからも常に心がけて行きます。インターネットで買われたお客様や自作のお客様にもそれらの提供は喜んでします。カヤックはフィールドの情報と使い方のソフトウエアーがあって初めて安全に使えます。

最終結論
1,出艇すると言う意思決定のプロセスで風速5m/S以上を予想される時には出艇をしない。技量や個人差もありますが今回はそれも越えるハードな海象だと思います。
天気予報は前日よりも当日の朝の予報を判断に使う。事故当時は帰りに斜め左後ろからの風、時には10m/sを超えていたと思います。しかもフリーウォータートレックは船型から乗っている人がベテランでもこの海象で他艇をヘルプ出来る余裕は無いと思います。安定した重い木造艇2艇なら1艇を曳航出来たかも知れません。2艇の組み合わせもミスマッチでしょう。(陸上の自動車の安全の常識を思考の中から外さないと、海では通じません。)

2,死因がPFD(ライフジャケット)を付けていたにもかかわらず溺死です。波を被り続けた為に呼吸の為の気管に水が入って力をなくして行ったのを想像しました。外洋ヨットのOffshore Special Regulations(外洋特別規定)では顔の前の空間を確保出来るPFDの着用が強制になりました。今はまだメーカーが急いで作ったばかりで透明なフードを頭の後ろから被る事で口と鼻の前の空間を確保出来るようになっています。(改良の余地はあります。)これが海へ出る(波を被る可能性のある水域)カヤックのPFDにも付くようになれば溺死という結果は無くなくります。ライフジャケットのメーカーには早くオプションでもいいから作ってほしいと思います。溺死が無くなれば生存の確率が非常に上がると思います。

出艇する時の意思決定の正しいプロセス、PLB、PFDのフード装着がどれか一つでもそろっていれば死亡事故は防げたと思います。水温に適したウエットスーツ、ドライスーツがあれば低体温による水死も防ぎます。二度と同じ事故を起こさない為にも参考になればと思います。天候の想定外はしょっちゅう起こります。想定外に普段から対応することと装備をする事です。海は陸上の常識は通用しません。
絶対に海をなめては行けません。

最後にこの事故の調査(私の勝手な調査)に親切、丁寧に情報提供、協力して頂いた第四管区海上保安庁の方々にお礼を言いたいと思います。
(本当にありがとうございました。<(_ _)>)